はじめに(導入)
ADHDって聞くと、「落ち着きがない人」とか「集中できない子」っていうイメージが強いかもしれない。実際、ぼく自身もADHDという言葉を知るまでは、「自分ってただのダメ人間なんじゃないか」って思ってた。
友達と同じように机に向かっても、集中できなくてすぐに気が散ってしまう。長く座っていられないし、「やろう」と思っても取りかかるまでにすごく時間がかかる。そうやって毎日のように失敗して、それを繰り返して、どんどん自信を失っていった。
やろうと思ったことができない。毎日のように失敗して、それを繰り返して、どんどん自信を失っていった。でも、大学生になってから「これは特性かもしれない」と知ってから、少しずつ見方が変わってきた。自分を責めるのではなく、理解しようとすること。そこからようやく前に進めるようになった気がする。
この記事では、ぼくが感じているADHDの症状や、それによって日常でどんな困りごとがあるのか、ありのままに書いてみようと思う。
ぼくが感じているADHDの症状
ぼくにとってADHDの症状は、ただ「集中力がない」とか「落ち着きがない」というレベルの話じゃない。もっと複雑で、もっと地味に、でも確実に日常を狂わせてくる感覚なんだ。
注意がすぐそれる
たとえば授業を受けているとき。教授の話を聞いていても、教授の話を聞いているつもりでも、ある言葉や例えがきっかけで、頭の中で連想ゲームが始まってしまうことがある。「あ、この話、前に読んだ本に似てるかも」みたいな感じで、気づけばまったく別のことを考えていて、話の本筋が飛んでしまっている。
また逆に、ひとつの話題に強く引っかかって、それについてずっと考え込んでしまって、他の話が一切入ってこないこともある。過集中のような状態で、周りの音や進行が全部切り離されてしまう。気づいたときには、もう授業の半分が終わっていたりする。
それに、集中していたのか、ぼーっとしていたのか、時間の感覚がまったくなくなってしまうのも特徴だと思う。そして気づいたときには、授業の内容がまったくわからなくなっている。まるで“意識がワープ”したみたいな感覚になる。
電車の中で読書していても、数ページ進んだと思ったら内容が頭に入っていないことがよくある。目では読んでるけど、頭の中では全然別のことを考えている。こういうことが日常茶飯事で、正直すごくしんどい。
頭の中がごちゃごちゃ
やるべきことがいくつもあるとき、頭の中では常に焦りが渦巻いている。だけど、その焦りが計画につながるわけじゃなくて、「何からやればいいのか」がわからないまま立ち尽くしてしまう感じ。
何かに取りかかっても、他のやるべきことが頭に浮かんできて、集中がそっちに引っ張られてしまう。だから目の前のことに全力を注げない。
現実逃避をしているわけじゃない。ただ、どうしたらいいのか本当にわからなくなって、頭が混乱してパニックに近い状態になる。そして、どっと疲れてしまって、何かを始めるエネルギーすら残っていない。
「さっさとやればいいだけなのに」と自分でも思うけど、体も心もまったく動かない。そんなとき、自分の中の“やる気”とか“意志力”を責めたくなる。でも本当は、頭の中の整理が追いついていないだけなんだと思う。
優先順位がつけられない
洗濯物が目に入った瞬間に、「あ、洗濯しなきゃ」って思ってしまって、気づいたら洗濯機を回している。でもそのとき、本当はレポートの締め切りが迫っていたはずなんだ。頭では「今やるべきじゃない」とわかっていても、意識がどうしてもそっちに持っていかれてしまう。
ぼくの集中って、例えるならトンネルの中を進んでる列車みたいなもの。目の前にある“それ”しか見えなくなって、それ以外の景色は全部遮断されてしまう。そして、一度タスクに気を取られると、優先順位関係なくもうその線路の上を進むしかなくなる。
タスクの優先順位とか重みを理解はできているけど、意識がどうしても向かない。あれもやらなきゃこれもやらなきゃでパニックになってしまうことも多い。
感情の起伏が激しい
ちょっとした一言でイライラしたり、逆に明日が休みなだけで子どもみたいに嬉しくなったり、感情の振れ幅がすごく大きいと感じる。自分でも「なんでこんなに反応してるんだろう」と思うんだけど、気持ちが勝手に動いてしまって、それをコントロールするのがすごく難しい。
何気ない他人の言葉が、なぜか刺さって何時間も引きずったり、SNSの軽い一言に妙に腹が立ったり。逆に、ちょっとしたことでテンションが爆発的に上がることもある。
周りからは「情緒不安定」や「子どもっぽい」と言われたこともある。でも、自分としてはふざけてるわけでも、わざと感情的になっているわけでもなくて、ほんとうに“そう感じてしまう”からどうしようもない。
一日に何度も感情が上下して、それに自分でついていけなくなって、気がつくとぐったりしていることもある。感情に振り回されるのって、思っている以上にエネルギーを消耗するんだなって、よく思う。
こんなことに困っていました
ADHDの症状そのものよりも、それによって引き起こされる“困りごと”のほうが、ぼくにとってはずっとしんどかった。日常生活や人間関係、学業にまで影響して、「なんで普通にできないんだろう」という自己否定に繋がっていった。
忘れ物・遅刻・先延ばし
大学に入ってからも、忘れ物や遅刻、課題の提出忘れは何度もあった。たとえば、前日にしっかり筆箱をバッグに入れておいたはずなのに、当日の朝に「ちょっとメモしよう」と思って取り出して、そのまま机に置きっぱなしにして忘れてしまう。
課題も同じで、提出日をちゃんとメモしていても、「提出しなきゃ」ということ自体を思い出すのに時間がかかる。やるべきことを“思い出す”という行為を自分の中で実行するまでに、数時間、時には数日かかってしまうことがある。
だから、ふとした瞬間に「あ、そういえばあの課題…」と気づいたときには、すでに締め切りが過ぎていた、なんてことも珍しくない。
わざと忘れているわけじゃない。むしろ忘れたくないから何度も準備しようとしている。それでも、脳がうまく“記憶の棚”を開けてくれない感じがして、自分でももどかしくなる。
こうした積み重ねで、だんだんと自分の信用が下がっていくのを感じて、何度も落ち込んだ。「やる気がない」「だらしない」って思われるんじゃないかという不安がいつもある。
でも、本当はやりたい。やろうとしてる。忘れたくて忘れてるわけじゃないし、できなくていいなんて思ってない。それでも、どうしてもできないことがある。
そのたびに、「またダメだった」と自分を責めて、自己嫌悪のループに入ってしまう。周りから「できない子」と思われてるんじゃないかという視線も、気になって仕方がない。馬鹿にされているように感じることもあるし、「何でこんなこともできないの?」という雰囲気に耐えられないときもある。
そういうのが積み重なって、どんどん自信を失っていく。できない自分に、存在ごと価値がないんじゃないかって思ってしまうことさえある。
授業や作業への集中が続かない
「よし、やるぞ」と思って机に向かっても、そこから先が本当につらい。いざ作業を始めても、すぐに意識が飛ぶとか、別のことを始めてしまうというより、「同じことをし続ける」ということ自体が苦痛なんだ。
文字を読んでいても、思考が進まない感じがして、じっとしているのがつらくなってくる。何かを考えようとしても、頭に必要なエネルギーが足りないような、そんな感覚になる。
無理やり座って続けようとしても、どんどん疲れてきて、身体も重くなっていく。やる気がないわけじゃない。むしろ「やらなきゃ」という気持ちはずっとある。でも、脳と体がついてこない。
そうやって時間だけが過ぎていって、気づけば何も終わっていない。「また今日もダメだった」と思って、絶望感だけが残る。その感覚の積み重ねが、自分のことを信じる力を少しずつ削っていくのを感じる。
サボってるんじゃない。手を抜いているわけでもない。ただ、続けることそのものがものすごくしんどい。ADHDって、そういう“目に見えない疲れ”と毎日戦っているようなものなんだと思う。
衝動的な言動
衝動性は、ぼくにとってかなり厄介なもののひとつだと思う。たとえば、衝動的な行動や感情の爆発は、自分でも手に負えないと感じるときがある。たとえば、LINEのメッセージでイラッとしたときに、冷静になる前に感情のまま強い言葉を返してしまって、あとから後悔でいっぱいになる。
家族に何かを言われて、頭では受け流せばいいとわかっているのに、感情が一気に爆発して癇癪みたいに怒鳴ってしまったこともある。そういうときは、イライラが体から抜けなくて、寝ようとしても眠れなくなってしまう。気持ちが収まらないまま朝までずっと起きていて、結局徹夜してしまうこともあった。
一度そういう状態になると、他のことがまったく手につかなくなる。課題も家事も、何もできない。ただただ感情に飲み込まれて、動けなくなってしまう。
その後にくる自己嫌悪は本当にしんどい。「なんで止まらなかったんだろう」「またやってしまった」と思って、どんどん自分が嫌いになる。
衝動というのは、本当に“自分の意志じゃないところで勝手に反応してしまう”感覚があって、それが理解されにくいからこそ、余計に孤独を感じる。
断らなきゃいけない予定でも、「うん行くよ」と反射的に返事をしてしまって、あとでスケジュールが詰まりすぎてパニックになったりする。
本当は少し考えれば判断できることなのに、「その場の気持ち」や「その瞬間の思いつき」で行動してしまう。自分で決めたというより、“体が先に動いてしまった”ような感覚になる。
あとになって「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「なんで断らなかったんだろう」と頭を抱えるけど、衝動的な行動はいつも一歩先に出てしまって、止められないことが多い。
それで信頼を失ったり、人間関係がぎくしゃくしたりすると、また自分を責めてしまう。意図的にやっているわけじゃないのに、結果だけ見ると“わざとやった”ように思われることがあって、それが一番しんどい。
まとめ
ADHDの症状は、外から見えにくいことが多い。「集中できない」「感情のコントロールができない」「やるべきことをやれない」といった現象だけが表に出て、それが「怠けてる」「自己管理できていない」と誤解されることも少なくない。
でも、ぼく自身が経験してきたのは、そういう“だらしなさ”ではなくて、“意図せずにできないこと”への苦しさだった。やろうとしてるのに、できない。わかっているのに、体がついてこない。自分で自分をどうにもできないときの無力感。そしてそれが続いた先にある、深い自己否定。
それでも、少しずつ「自分の特性を理解する」ことができてからは、ほんの少しラクになった気がする。「できないこと」があっても、それは「自分が悪いから」ではないと、少しずつ思えるようになってきた。
ADHDでしんどさを感じている人、自分もそうかもしれないと悩んでいる人がいたら、「ひとりじゃないよ」と伝えたい。誰かに話してみること、自分の感覚を否定しないこと。どれもすぐにうまくいくとは限らないけど、試していく価値はあると思う。
ぼくもまだ毎日ぐらぐらしながら生きてる。でも、少しずつ自分の扱い方を知っていくことで、前よりもほんの少し、自分を肯定できるようになってきた。
焦らなくていい。完璧じゃなくていい。
自分のリズムで、自分のやり方で、生きていけるように、一緒に少しずつ模索していこう。
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